M6の衝撃!性能の異なる3種類のCPUコアを統合した初のAppleシリコン
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業界に先駆けてTSMCの2nmプロセス「N2」で製造された「Apple M6」がMac mini(M6)に搭載された。そこでM6に採用されたさまざまな新機軸を見てみたい。まずはAppleシリコン初となる3種類のCPUコアから見てみよう。
従来のAppleシリコンでは、CPUコアは「高性能コア(High-Performance Core)」と「高効率コア(High-Efficiecy Core)」の2種類のコアで構成されていた。業界最強レベルのIPC(クロックあたりの処理能力)を持つ高性能コアと、性能はそこそこだがエネルギー効率に優れた高効率コアを組み合わせ、デバイスの負荷状況に応じて使用するCPUコアをダイナミックに切り替える。
アイドル状態に近い状況では高効率コアを最小限で動かし、高負荷がかかれば全コアを叩き起こしてフル稼働させる。そんな仕組みだ。2種類のコアにはオーバーラップ領域が設定されていて、負荷状況に応じて処理がバトンタッチされる。(big.LITTLE)
2026年3月にリリースされたM5 Pro/M5 Maxでは、この2種類のコア構成が大きく変更された。従来の省電力コアは無くなり、高性能コアは「スーパーコア(Super Core)」と改名された。さらに省電力コアに変わって新たに「新しい高性能コア(New Performance Core)」が採用された。そしてこの「新しい高性能コア」はM6リリース時に「高性能コア(Performance Core)」にひっそりと名前が変わった。
つまり、従来の「高性能コア(High-Performance Core)」と、M6の「高性能コア(Performance Core)」は全く異なるものであるにも関わらず、日本語表記が同じになってしまっている。(英語表記は同じではない)これは非常に紛らわしく誤解を生みやすい表記だと思う。本来なら「性能優先コア」とか「中間コア」とでも呼ぶべきだろう。
本題に戻ろう。この3種類のCPUコアは、その性能でいうとザックリ「4:2:1」となる。これはAppleシリコン上に占める各コアのダイ面積ともほぼ一致する。(ただしキャッシュは除く)M6はスーパーコア2基+高性能コア4基+高効率コア6基の構成で、これはM5のスーパーコア4基+高効率コア6基とほぼ同じ性能指標となる。つまりトータルのCPUコア数は10コアから12コアへ増えているが、その中身を見るとスーパーコアが2つ減った一方で、性能が約半分の高性能コアが4つ追加されているので、総コア数の増加分が性能に直結するわけではない。
一方でAppleはM6のCPU性能(総合)がM5比で最大1.2倍としているので、その向上分の主体は2nmプロセスの採用による動作速度の向上とアーキティクチャの見直し、キャッシュの増強や最適化などの恩恵と考えられる。
では、なぜM6ではM5 ProやM5 Maxのようにスーパーコア+高性能コアの2種コア構成にしなかったかというと、M6を使うのがMacだけではないからだと考えられる。3種類の性能規模の異なるCPUコアを組み合わせることで、性能とエネルギー効率の調整幅を拡張できる。中でも高効率コアの存在によって、アイドル状態(ユーザが操作していない時間)のエネルギー消費を大幅に削減できる。加えてCPUパワーが必要な場合でも、中間性能の「高性能コア」が存在するお陰で、エネルギー効率で不利な「スーパーコア」の稼働率を下げることが可能になる。
左がM5までのAppleシリコン、右がM6の各CPUコアのカバーレンジ。CPUコアが2種類の場合は両者のオーバーラップ領域が狭いため、「省電力だが低性能」か「高性能だが大食い」かの選択肢(あるいは両方使う)しかなかったが、中間的な性能のCPUコアが追加されたことでオーバーラップ領域の自由度が広くなり、性能と電力の調整範囲(自由度)が広くなっている。
Appleシリコンは「パフォーマンスコントローラ(Performance Controller)」によって各プロセッサコアの処理割り当てをダイナミックかつ柔軟に制御できる。これによって、例えばiPadや(ファンレスの)MacBook Airなどでは普段使いのエネルギー効率を高めて(その分性能は抑制して)バッテリ駆動時間を延ばしたり、発熱を抑えることができる。
逆にMac mini(M6)のようなAC駆動のデバイスでは、チューニングによってその性能を限界まで絞り出すこともできる。これはAppleのいう「エージェント型コンピューティング」には欠かせない要素だ。3種類のCPUコアの組み合わせは、その調整範囲を大きく拡張し、しかもきめ細かく制御することが主な目的だろう。
M4シリーズ、M5シリーズ、そしてM6のコア構成を比較した。M4とM5の構成は同じだが、M5 Pro、Max、Ultraでは省電力コア(E-Core)に代わって、新性能コア(P-Core)が新たに搭載された。その一方でスーパーコア(旧高性能コア)はその数が減らされ、その分を新性能コア(P-Core)の物量で押し切る、という構成となっているのがわかる。そしてM6では、その3種類のCPUコアを全て搭載した。おそら今後登場するAppleシリコン(Aシリーズも含めて)は、この3種類のCPUコアを組み合わせるのが一般的になるはずだ。
そしてこの3種類のCPUコアという新たな構成は、近く登場するA20 Proにも採用されると考えられる。3種類のヘテロジニアスCPU構成によって高負荷時に電力を食う(どん欲)なスーパーコアへの依存度を下げられることは、限られたバッテリ容量と冷却性能で動作しなければならないiPhoneにとって、極めて重要だからだ。これによって、ここぞというシーンでの圧倒的なピーク性能と、普段使いでの省電力(バッテリ駆動時間の向上)の両立が、より高いレベルで実現するだろう。
執筆:MysticRoom Tak.
