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TBPN:AppleのEddy Cue氏、Appleの成功を支えた製品開発と歴史を語る

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Apple Exec on How Apple Builds Products That Actually Win

Apple Exec on How Apple Builds Products That Actually Win

TBPNが、Appleのサービス&ヘルス担当シニアヴァイスプレジデントEddy Cue氏へのインタビュー「Apple Exec on How Apple Builds Products That Actually Win」を公開しています。

私たちは、Appleが世界で最も価値のある企業であることを当然のように受け止めています。しかし、1990年代後半、この会社は巨大なタイタンなどではありませんでした。それは倒産寸前の、いわば「幽霊船」のような状態だったのです。

その暗黒時代から現在のルネサンス(再興)への道程を、38年という驚異的なキャリアを通じて中心で支え続けてきた彼が、Steve Jobs氏と共にAppleの「魔法」を形作ってきたエピソードには、ビジネスにおける泥臭い試行錯誤と、冷徹なまでの直感的決断、そして「ユーザー・フリクション(顧客の抵抗感)」を排除するための執念が詰まっています。

99セントの楽曲販売を支えた「決済の裏技」

iTunes Storeの誕生は音楽産業を救いましたが、当時「1曲99セント」という均一価格の設定は、業界の常識からすれば無謀な挑戦でした。

最大の問題は、バックエンドの金融構造にありました。クレジットカード決済には「固定手数料+パーセンテージ」というコストが発生します。99セントの販売では、手数料だけで約25セントが消え、残りの大部分をレーベルに支払うと、Appleの手元には赤字しか残りません。実際、多くのレーベルが独自のサービス構築を試みましたが、曲ごとに価格を変え、複雑なルールを設けるなど、利便性よりも保身を優先したために失敗に終わりました。

Eddy Cue氏は、この問題を「決済の垂直統合」と呼ぶべきインフラの工夫で解決しました。それが、8時間から24時間という特定の時間枠でトランザクションを集約する仕組みです。

Eddy Cue氏は「(価格が99セントであることへの反発について)問題は、売却価格が1ドル29セントだろうが79セントだろうが、状況は変わらなかったということです。……(中略)……クレジットカードで99セントを請求すれば、固定手数料とパーセンテージによって赤字になります。……誰もそれをやりたがらなかった。なぜなら、1曲売るごとに赤字になるから。」と話します。

Appleは、顧客が1曲だけでは終わらず、複数をまとめて購入するはずだという直感に賭けました。決済を一定期間「開いたまま」にすることで、複数の購入を1回の手数料で処理し、経済性を成立させたのです。シンプルさを追求したこのビジネス戦略こそが、音楽を「所有」から「デジタルアクセス」へと変える真のイノベーションでした。

Apple Online Store:倒産危機から放った「Good, Better, Best」の矢

1997年、Appleが倒産の淵にあった時期、Eddy Cue氏はもう一つの大きな賭けに挑んでいました。「Apple Online Store」の立ち上げです。

当時、Apple製品はCompUSAなどの外部販売チャネルに依存していました。直販サイトを構築することは、これら既存パートナーとの対立、あるいは離反を招くリスクがありました。しかし、Steve Jobs氏とEddy Cue氏のチームは、顧客が自分好みの構成で注文できる体験を重視し、あえてこのリスクを取りました。

ここで採用されたのが、心理学に基づいた「Good, Better, Best」(グッド・ベター・ベスト)という製品構成モデルです。

選択肢をシンプルに整理し、ユーザーの決断を助けるこの販売手法は、その後のAppleの勝ちパターンとなりました。伝説の初代iMac(ボンダイブルー)と同日にローンチされたオンラインストアは、初日だけで100万ドルの売上を記録。Steve Jobs氏とEddy Cue氏はオフィスでハイタッチを交わし、Appleが顧客と直接つながる現代的企業へと変貌する第一歩を刻みました。

Steve Jobs氏とTim Cook CEOに共通する「真の執着」

メディアはよく、カリスマ的なSteve Jobs氏と、オペレーションの達人であるTim Cook CEOを対比させたがります。しかし、二人を最も近くで見てきたEddy Cue氏は、彼らの「違い」よりも「共通点」にこそAppleの本質があると指摘します。

驚くべきことに、世界一の時価総額を誇る企業のトップ二人は、財務指標(利益)を第一の目的にしていなかったというのです。彼らが異常なまでのエネルギーを注いでいたのは、以下の3点だけでした。

プロダクトの質:顧客に届ける体験そのもの。
Appleという会社:その文化とミッションの維持。
家族:私生活における絶対的な優先順位。

Eddy Cue氏は「Steve Jobsより一生懸命働く人間を私は知りません。……(中略)……Steve JobsとTim Cookの違いを聞かれますが、本当の問いは『何が同じか』です。彼らは誰よりも懸命に働き、2つのこと——Appleと家族——だけに完全に集中していました。そして製品そのものへのこだわりです。財務結果は二の次でした。」と話しています。

「財務結果は二の次」という逆説的な姿勢こそが、結果として世界で最も価値のある企業を作り上げたのです。

サブスクリプション時代を切り拓いた「常時接続」という前提

現在、サービス部門はAppleの巨大な成長エンジンです。しかし、Eddy Cue氏はこの成功を、単なるコンテンツの魅力ではなく、インターネット環境の劇的な変化に求めています。

以前の「従量制」で不安定な接続環境下では、コンテンツをデバイスにダウンロードして保存することが必須でした。しかし、高速な常時接続が当たり前になったことで、ユーザーは「保存」を意識する必要がなくなりました。Appleはこのタイミングを逃さず、ビジネスモデルを「所有」から「無制限アクセス(サブスクリプション)」へと移行させました。テクノロジーの進化というインフラの波を完璧に捉えたことが、Apple MusicやApple TV+の躍進を支えたのです。

F1とVision Pro:コックピット体験の民主化

Appleの最新の関心事は、スポーツや映画を通じて「その場にいるような体験」を再定義することです。現在進行中のブラッド・ピット主演のF1映画制作は、その象徴的なプロジェクトです。

「cockpit」の民主化:iPhoneのカメラ技術をF1マシン各所に配置。時速300kmを超える極限のG(重力)を映像として捉え、視聴者がドライバーと同じ視点に立てるようにしました。

マルチビューの革新:Apple TV+での視聴時に、好きなチームやアングルを自由に選べる機能を提供。すでに視聴者の30%がこのインタラクティブな体験を利用しています。

Vision Proという究極のシミュレーター:Vision Proを活用したシム・レーシング(Sim Racing)体験により、もはや物理的な機材がなくても、プロレーサーが見る世界を誰でも体感できるようになります。

これは単なる映像配信ではなく、Appleの持つハードウェアとソフトウェアの力を駆使して、人々が想像もできなかった方法でエンターテインメントを「再構築」する試みなのです。

結論

Eddy Cue氏の38年にわたるキャリアは、Appleの歴史そのものであり、常に「人々が想像もできなかったことを可能にする」という不変のミッションに貫かれています。

倒産寸前の危機から、決済手数料の壁、そしてメディア体験の変革へ。Appleが勝ち続けてきた理由は、目先の利益や効率、あるいは複雑なビジネスルールに惑わされることなく、常に「最高のプロダクトがもたらす魔法」を信じ、そこにあるユーザー・フリクションを徹底的に排除してきたからに他なりません。

ここで、あなた自身に問いかけてみてください。
「もし、あなたが利益や効率よりも『プロダクトの魔法』だけに集中したとしたら、あなたの仕事はどう変わるでしょうか?」



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