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ANA「ボーイング787」SROV発表会イベントレポート

機体製造・素材提供も含めると、日本の貢献度が極めて高い B787

機体製造・素材提供も含めると、日本の貢献度が極めて高い B787

全日空が、世界で最初に導入する旅客機「ボーイング787 」(B787-8) 型機の試験飛行機 が日本の空港での運航が可能であるかの事前テスト「SROV (Service Ready Operational Validation)」を行うために初来日したのを記念して、ANA メンテナンスセンターにて発表会が行われました。

B787 が太平洋を越えて、アジア圏に飛来するのは初めて。

B787は利用パーツの実に35%を日本企業が製造している上に、筐体の主要素材である複合材は東レが生産していることからボーイング社も「Made with Japan」と認めるほどの機体。このために、或る意味では初めての里帰りとも言えます。


日本に飛来した機体は 6機存在する試験飛行機のうち、ANA塗装がされた2号機 "ZA002 (機体コード: N747EX)"。これは、現在飛行している B787試験飛行機のうち、ボーイング社 B787 塗装以外の塗装がされている唯一の飛行機です。

なぜ、B787 には ANA 塗装の特別な機体が存在するのかと言うと、ANAはB787 の開発構想が発表された際に「787 の製造を開始する」とボーイング社が決断するだけの大口発注を最初に行った「ローンチカスタマー」という特別な顧客航空会社であるから。今でこそ、「航空機史上最大の販売予約機数」を誇る B787 ですが、「7E7」という開発コードで開発が始まった当初から暫くの間は ANA しか発注せず、相当気を揉んだ機種と説明されました。ただ、そのような理由を持ってしてもANA塗装機が日本へのフライトテスト機に選ばれた上に、1週間も滞在して6つもの空港でSROVが行われるのは業界的には異例。エアバス社の総二階建て飛行機 "A320" ですら、日本へ飛来した時には エアバス塗装機が成田空港でのSROVをしただけで帰ったことからも異例さが際立ちます。

発表会はB787を紹介するオープニングムービーの終了と同時に、格納庫のドアが開き、B787がトーイング(牽引)されて開始されました。機内から登場したのはANA伊東社長とボーイング民間航空機部門 ジム・オルボー社長兼CEO。


整備士の合図によって、格納庫のドアが開く


B787 がトーイングされ、厳かに登場


目の前に駐機する B787


牽引するための トーバー も B787 専用品。『B787』という刻印が眩しい


ANA とボーイングの両社長が B787 機内から登場


客室乗務員に囲まれ、華やかな雰囲気のなかで 両社長が固く握手


ここから、両社長によるスピーチが行われました。

ボーイング社は B787 の開発が遅延したことを詫びると共に、日本企業による B787 開発・製造への貢献に対しての謝意が表明され、ANA からは1stデリバリー機材は 羽田-広島 か、羽田-岡山 路線に投入されることが発表されました。


発表会後はANAのマーケティング・開発スタッフによる B787 の説明へ。

まず、B787 の立ち位置ですが、最大の特徴は「ECO」であること。軽量機体である上に、各種設計技術を駆使することで中型機の B767 と同サイズでありながらも、B777-300ERを超える飛行距離を誇ります。これによって、「新規路線を開拓すれば、特定搭乗数に到達するまでは他航空会社が参入しない」という護送船団方式だった 45/47体制後の、現在の飛行行政において「同じ路線を安価に飛ばせるということは競争力を保てる」というメリットが有ります。


ツルンとした印象のフロント部。操縦席の窓が、機体のデザインと完全に統合されている上に1枚が大型化されて枚数が少なくなっているのが分かる


試験飛行機とは言え、エンジニアが乗り込むのでドアなどには正しい装備が搭載されている


他機種ではオプションになりがちな『ウィングレット』は主翼に完全に統合されて標準装備に

他機種ではオプションになりがちな『ウィングレット』は主翼に完全に統合されて標準装備に

これらの経済的メリットは、安全な飛行を続けるのに必要不可欠なメンテナンスにも及びます。

ANA は B787 のローンチカスタマーであるために、ボーイングと「Working Together チーム」を結成し、B787 の仕様策定やメンテナンスプログラムの開発に従事して来ました。このために、B787 のメンテナンスプログラムや機体制御システムに、ANA が安全運航を守るためにメーカー規定項目よりも厳しく定めている社内メンテナンス規定項目を守り易くするための各種設定やプログラムを入れることができ、これが1機体当たり20年と言われる 経済的運用期間 (メンテナンスを行って飛行させても、安全確保にコストが見合う期間) 内におけるメンテナンスコストの削減が実現します。


機内シートは、新造B777-300ER などで使われているものと同一のものが使われる

機内シートは、新造B777-300ER などで使われているものと同一のものが使われる

また、Working Together として存在できたことは、仕様決定にも大きな影響を持てたことでメリットが大きく「B767 などは数え切れないほどのオプションを組み合わせて自社仕様の機体を作れたが、B787 はエンジンは2種類、機内エンターテインメントシステムも 2機種というようにオプションの選択肢が殆ど存在しない。」という状況において、ANA ならではの仕様を「全部では無いものの、相当数を盛り込めた」ことが非常に大きなメリットとなっているということでした。


ANA にとっては久しぶりの RR社Trentエンジン。エンジンカウルの終端は、シェブロン・ノズルというギザギザのカット加工が施されている

ANA にとっては久しぶりの RR社Trentエンジン。エンジンカウルの終端は、シェブロン・ノズルというギザギザのカット加工が施されている

飛行機における ECO には、騒音問題も有ります。B787 のエンジンは P&W社製エンジンが多い ANA としては久しぶりの ロールス・ロイス plc (RR)社製Trent1000型エンジン。これは騒音低減と経済性から決定したという事で、更に「数%燃費は悪くなりますが、騒音がかなり低減されるので」シェブロン・ノズルというギザギザのカット加工が施されています。


短時間では説明できないほどの新技術が盛り込まれている

短時間では説明できないほどの新技術が盛り込まれている

この辺で時間切れ。最後に向けて、ANA として B787 に搭乗した際に気付いて欲しいこととして「これまでに飛行機よりも与圧は低く、湿度を高く設定出来る機材なので『女性にこそ乗って欲しい機体』。これらの差でもたらされる快適さを感じて欲しい」、「窓のシェードは電気制御される電子カーテンになっており、(機内照明などと同じように) 客室乗務員の操作で一斉開閉出来るようになっている。これで国際線の睡眠時間におけるシェード閉めの手間、離発着時のシェードオープンなどの手間が相当軽減されて快適な機内環境に貢献できる」ことなどが説明されました。


逆に ANA として残念なことは「ボーイング社との兼ね合いで、相当頑張って色々盛り込んだものの、全部を入れられた訳では無いこと」「"7E7" という開発コードの時のスケッチでは、もっとカッコ良かったんですけど、機内サイズを大きくしたり色々したら、必ずしも格好良いとは言えないスタイルになってしまったこと」などが挙げられました。しかし、「10年に一度と言われる新機種のローンチに、ANA として貢献でき、ベストを尽くしたのは良い体験だったし、搭乗したお客様にも必ずや喜んで頂けるハズの出来になった」事は誇らしいと説明されました。


最後に、特別な秘密として B787 ZA002型機 は試験飛行機ではあるものの 3-3-3配列シート数列で、100人までは行かないものの相当数のエンジニアが乗り込めるようになっている事、ANA は B787 を一番最初に引き渡される航空会社であるものの、今回飛来した ZA002 型機の受領は無くなったことなどが明かされました。


機内を覗けたのはココからだけ。この辺には試験機材を積むための、ほとんど空洞になっているはず


ただ、ANA に最初に引き渡される機体が ZA001(試験飛行1号機) なのか、ZA007 (量産1号機)なのかについて、2機目以降の引き渡し順番と引き渡し時期については「ボーイング社との契約上明かせない」ということで説明されませんでした。

また、B787 の国際線デビュー路線についても、「発表できる時期が来たら発表するが、今日は勘弁して欲しい。ただ、B787 は B777-300ER と同じぐらいの距離は飛べるように設計されている」という説明にとどまりました。





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