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Creators Summit 2009:デザインは新聞を救えるか? #CS2009

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Jacek Utko氏

Jacek Utko氏

2009年12月3日,4日にベルサール汐留にて「Creator's Summit 2009」において、ポーランドを中心に活躍しているグラフィックデザイナー、Jacek Utko氏による「デザインは新聞を救えるか?」と題したセッションが行われました。

Jacek氏は、売上を上げるために、新聞のデザインを考える仕事をしているそうで、その実績を踏まえた取組むべき事について話しはじめました。


新聞のリニューアルに関して、先にデザインをすることはせず、まず戦略を立てることが重要で、ビジネスのスポットをどこに置くのかなど様々な観点から考察する必要があると説明してました。

また、既存の読者と新規読者の獲得を両立できるよう3ヶ月ほどかけて戦略を考えることも重要で、それを多くの新聞のデザインで行ってきたそうです。

リデザインは、表面を変えるということではなく「プロダクトを変える」というスタンスでなければ意味はないとし、インナーブランディングとして、社員に対してブランディングし、編集長だけでなく、関わる全ての人達と話しをする必要があり、それによって、より多くのアイデアと、これに関わっているという意識を持たせることによって,会社全体のモチベーションを上げることが最も重要な要素であると説明してました。


ポーランドの新聞「Puls Biznesu」は、リデザインによって、3年で35%売上がのび、世界のベスト新聞賞を受賞したそうで、Jacek氏が関わったヨーロッパーの新聞は、全て発行部数がのびたと説明してました。

友人が関わったリデザインを行なった新聞は、デザインをし過ぎて、読者と合わない新聞になり、部数が下がってしまった。そこには、明確な戦略と一貫性があるコンテンツが重要だということを示していると話してました。


紙、Web、モバイルはどれも同じコンテンツで提供される場合が多く、紙媒体は定番と死守してきたものを捨てて、紙でなければ実現できないストーリーを持たせたレイアウトデザインを導入する必要があるとし、マウスでクリックするより、目で確認する方が速い。それは紙だからこそ実現出来ると誌面の利便性について説明していました。


全ページのプランニングを考えるときに、ドローボードをページ分用意し、そこに手で書いて、関係者全てと考えるのが良い。なんでも、画面の中で見ると、実際の誌面の大きさが感じられない。新聞全体のエクスペリエンスを感じられるようになると説明してました。


新聞の編集者は、読者がどう思うのかを軽視しがちで、長い文章を書きがちだが、研究成果として15センチ以上の長いコラムは読者率が低い事がわかっていると話し、また、見出しと写真に一貫性を持たせると、読率は3倍伸びることがわかっていると説明してました。

ドイツで、新聞の記事を実際ナンパーセント読んでいるかを調査したところ、3%しか読んでいないことがわかり、残りの97%は読まれない無駄なものだとわかり、削減出来るポイントを探る指標として有効的だったと話しました。

新聞をだめにしているのは、「読者の事を考えない編集者と、アーティストのように振る舞っているデザイナー」で、新聞編集者の意識として、どう読まれるか?の先にある「どう見えるのか?」を考えることが重要で、関係部署でないスタッフに読んでもらうなど、客観的な視点をいれることが重要だと話し、「コンテンツ指向のデザイナーとビジュアル指向の編集者が新聞にとって、もっとも重要な人材」だと話してました。

若い世代は「父」と話すためにメールアカウントを持っているといった意識もあったりするので、世代の中の常識にも配慮する必要があると話し、意識の違いを理解するこで、誌面の頭部に引用やカレンダーを配置するといった新しいチャレンジを行い、その評価によって誌面を時代にあったものに変えていくことも重要だと説明してました。

タブロイド版に変えるといったサイズの変更を行なう場合、編集デザインが同じでは意味はなく、そのサイズにあった新しい編集方針を考えることが重要だとし、普通紙サイズの新聞はヨーロッパではほぼ無くなり、アメリカでも徐々に減ってきている。この普通紙サイズの新聞は読者のためではなく、広告や印刷所の関係でしかないと言い切ってました。

読み手のことを考えた新聞を考えていかなければ、部数低迷は止める事は出来ない。「広告スペースのためなのか?部数を伸ばすためなのか?」どちらに意識を持つかが重要だと話しました。

日本の場合、モダンなフレイバーを散らした新聞をつくるよう心がけ、まず、保守的な日本人を慣れさせていく必要があると思うと話し、古いものを全て捨てる必要はないが、やはりコンパクトにするのが良いのでは?と提案していました。


Jacek氏が関わったポーランドの新聞は、詰め詰めな新聞ではなく、ページ数のカットと人員カットを行い、読者のための質を重視した新聞に変えたところ、ポーランドの全ての新聞が購読者数を減らした中で、52%アップした新聞となったと話してました。


世界の主要な新聞のWebサイトは、オバマ大統領当選の時だけ、一斉にテンプレートを変えたが、その1日以外は、ずっと同じテンプレートを使い続けている。それっておかしくないか?と疑問を投げかけ、Webの新聞は、ブラックマンデーといった大きなニュースでも、ページ全面を埋め尽くすことはない。そもそもプレゼンテーションを行なうといった考えがないからだろうと話してました。

これからの新聞は「newspaper」から「usepaper」に変わる必要があると話しました。


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