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カーマイン・ガロ著「アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則」顧客満足度の重要性を説く

日経BPが発売する、カーマイン・ガロ著「アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則」を献本して頂いたのでさっそく読んでみました。

この本の中で語られているのは、Apple Retail Storeのスタッフには、歩合制をとらず売上のノルマもなく、求められているのは「顧客満足度」だけという非常にシンプルな目標についてです。

店舗運営における目標として、売上を目標とするのか?ブランド力アップを目標とするのか?とした場合、Apple Retail Storeから学べるのは後者です。最高のデザインを持ったハードウェア、最高に使いやすいソフトウェアが揃ったとしても、それを顧客にどう届けるのか?まで考える重要性を知ることが出来ると思います。


第7章「従業員に権限を委譲する」という話しの中で「修復すべきは顧客とのつながりであってコンピュータではない」という内容が説明されています。

この話しに関するエピソードは非常に多く、本の中でもたくさん取り上げられています。私が聞いた最近の話しだと、知り合いがiPhone 4Sの背面パネルが割れてしまったと聞き、Apple Retail StoreのGenius Barに行けば2,800円で修理してもらえると教えてあげました。しばらくして、修理しに行ったかと尋ねると、なんとiPhone 4Sが新品になったと教えてくれました。Geniusは、背面パネルを交換し、その後、その交換を行ったiPhone 4Sを新品と交換してくれたそうです。料金は2,800円しかかかっていません。これは、全て、Geniusが判断し、Appleとしてどう対処すべきか?を判断した結果なのでしょう。

Apple Retail StoreはAppleの一部であり、最高の製品を開発し、それを自分の手でユーザーに届けるという顧客との最終接点を担っているという気持ちを持っているのを毎回感じます。


第8章「アップルと同じサービスの5ステップを採用する」の中で、従業員が叩き込まれているのは「Approach」「Probe」「Present」「Listen」「End」の5つで、それが具体的な使用例として多くのページが割かれています。

この顧客満足度を計る方法として、フレデリック・ライクヘルド氏が提唱した顧客のロイヤルティを測るための指標のひとつ「NPS」を用いて行われていると説明しています。

Apple Retail Storeの従業員にノルマが無いのは有名な話しで、顧客に「EasyPay」の体験を進めてくる事からも明らかです。


第12章「感動の瞬間をつくる」の中で、iPadと感動の瞬間を作るというのがあり、具体的な流れで説明がされています。Apple Retail Storeでは、店舗によって顧客とのエンゲージメントも様々な手法があり、それぞれが楽しくなるものばかりです。これは、Apple Store, Nagoya Sakaeで目撃した事例ですが、iPhoneを購入したユーザーがセットアップをスタッフと一緒に行っていた場面で、iPhoneのホーム画面が表示された時に「おめでとうございます」と拍手するところに何度も遭遇します。私は、これは決まった手法なのかと尋ねると、いや全員が行っているわけじゃないですが、ユーザーは喜んでくれます。と説明してくれました。iPhone、iPad Wi-Fi + Cellularなどは、アクティベーションをする手順があり、その機械的な手順の中にこうした演出があると、顧客と従業員との距離はとても短くなると感じます。

また、最近、製品発売開始時のカウントダウンでは、店内で並んでハイタッチという演出から、店の外に出て、並んでる顧客と一緒に並んで花道を作り店内に迎えてくれるというのもApple Store, Nagoya Sakaeならではだと思います。

Apple Retail Storeから得られるエクスペリエンスは同じなのですが、その手段はスタッフが自発的に考えているというのは、地域性に溶け込む上で重要な要素だと思います。


Apple Retail Storeに関する噂が最初に漏れ出たのは、AppleInsiderが1999年10月頃に記事にしたのが最初で、日本では、1999年11月に全国34店舗でアップル製品の専用スペース「Apple Store-in-Store」(後のAppleショップ)を展開することが発表された頃です。

2001年5月19日に最初のApple Retail Storeをオープンする前に、当時Steve Jobs氏へのインタビューをCNBCが行いストリーミング放送されていました。日本もMacWIRE Onlineなどが記者会見の内容を伝えていましたが、それらはもう残ってはおらず、Mac Observerなどで読めるだけです。

この時、Steve Jobs氏は「われわれの市場調査によると課題は,この95%の大部分の人がパソコンを買う前にAppleを考慮にさえ入れていないということだ。われわれは,競争相手にさえなっていない。この状況を是非変えたい」と述べていました。

この話しにまつわるエピソードとして、ウォルター・アイザックソン著のSteve Jobs氏の伝記「スティーブ・ジョブズ II」第28章 アップルストアの中に、2000年10月Ron Johnson氏が、プロトタイプの検討最終段階で、PowerMac、iMac、iBook、PowerBookと製品ラインごとに展示される予定だったが、デジタルハブ構想を練っている途中(発表は2001年1月)で、それに合う展示に変えるべきで、Movie、Photoといった何が出来るか?で展示を分けた方が良いと考え、それをSteve Jobs氏に進言したところ、激怒していまさらやり直せというのかと言い、店舗のプロトタイプに向かう途中、Steve Jobs氏は「ロンが正しいのはあきらかだ」と宣言し、やり直しが決まった。というエピソードが掲載されています。

この話しには空白の時間があり、このプロトタイプに当時のRetail Store マーケティング担当副社長の婦人が招待され、Steve Jobs直々に店内を案内されたあと、率直な感想を求められた婦人は「店がきれいなのは分かるけど、iMacとかiBookとか違いは分からないわ」と言ったそうで、その言葉から、一般の人には伝わらないと分かり、Ron Johnson氏の提案が正しいと理解したという話しを聞きました。このトップが間違っている事に気付き、やり直しを決断するというのは本の中でも語られています。その方向性として、上のインタビューの内容に繋がります。

ちなみに、我々は、2001年5月19日に、バージニア州McLeanのタイソンズ・コーナーにオープンしたApple Store Tysons Corner取材に行きました。取締役から4店舗の実験店として承認を受けた最初の2店舗の1つ(もう1店舗はApple Store Glendale Galleria)ですが、その後、色々と変化したなかで、Genius BarはApple Retail Storeの肝としていまでも継続されています。




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