Assembly hour「なんのための仕事?」西村佳哲×西堀 晋

Assembly hour「なんのための仕事?」西村佳哲×西堀 晋

2009年10月24日に京都精華大学にて開催された「Assembly hour:「なんのための仕事?」西村佳哲×西堀 晋」に参加してきました。

講師は、リビングワールド代表・働き方研究家の西村佳哲氏と、シンプロダクツ代表で、Appleインダストリアルデザイナーでもある西堀 晋氏の2名で、約3時間という長い時間のセミナーが開催されました。

なお、当日、Twitterで。#AssemblyHourでリアルタイム実況を林信行氏と一緒に行いました。


最初、西村佳哲が、自分の仕事をつくるという話題から入り、組織の中にいた頃を振り返ると、大きな会社の進め方しかしらないなと思ったと回想してました。

そして、柳工業の柳宗理氏に取材に行ったそうで、名作となる「バタフライ・スツール」について、柳氏は図面を書かないで物をつくることで有名で、事務所にはろくろが置いてあるのをみて驚いたそうです。



バタフライ・スツール

バタフライ・スツール

柳氏は、最初に思った形で完成するなんて嘘だと言ったそうで、スタッキングチェアを5つ重ねるとバランスが見えてくると話し、人間が手に触れる物は、形にしてからでなければ分からないのだと話したと紹介していました。

なんのためにデザインはしているのだろうか?と考える時、「良さそう」という雰囲気を出すためにデザインが使われている気がすると話し、ネッスルのロゴは素晴らしいが、やってることがエグいと思うと話し、デザインに対して「まぶしさ」を感じていたが、今の学生は感じているのだろうか?デザイン学校は「魔法学校」だが、そこで学んだところで「力」を発揮しているのだろうか?と思うと疑問を投げていました。

また、Macintosh Plusは、筐体の中に、制作者のサインが彫り込まれていたというエピソードを紹介し、ユーザーに制作する力を与えてくれたと話し、しかし、iTunes/iPodが登場して、これらは個人に力を与えているのだろうかと考えると疑問に感じ、これらは、人をより高度な消費者にしてるだけのように思えてならないと話してました。


西堀 晋

西堀 晋

次に、西堀晋氏が話し、作り手の側で考えると「パッケージ1つにしてもゴミにならないようにデザインしている」のがAppleデザインだとくくり、たとえ、製品寿命が2年だったとしても、その後、それがゴミにならず、ずっととっておきたいと思ってもらえるようなデザインを心がけていると話し、Appleのインダストリアルデザイナーは、わずか13人しかいないが、外注に出すこと無く、中のパーツ1つについても、自分達でデザインしていると話してました。

iTunes/iPodが高度な消費者を作り出しているだけという問題提議に対して、人の時間という物がiPodのようなもので削られていっているが、文化は進化していかなければならないと思っていると述べ、日本は、電車の中でもデジタルガジェットに追い込まれている気がして、また、生活にかかる費用が高過ぎるので、フルタイム働いている人が多い。しかし、視点を世界に向けて考えると、ちょっと田舎の生活であれば、そこまで働くなかでも良い事の方が多いんじゃないかと思え、その余暇を楽しむツールとして最高のアイテムの1つだと思うと話してました。

なお、自分が、何をデザインしたかについては、Steve JobsとJonathan Iveによるデザイン製品というスタンスなので言えないと断りを入れていました。


西堀氏は、最初、パナソニックのエアコン事業部でデザイナーとして働きはじめたそうで、エアコンにデザインが必要なのか分からず、すぐに会社を辞めようと思ったそうです。しかし、3年間とりあえずやってみろと言われて働いて、この3年が自分の全てだと感じると話してました。

エアコンのデザインというのもを考えるにあたって、いかに生活の中に馴染むかを考えた場合、デザインはプラスではなくマイナスで、どんどんデザイン画を描くと、どんどんプラスのことしか思い浮かばなかったそうです。ただ、当時いた9人のデザイナー全員が、このデザイン部署が無くなれば良いとマイナスに考えていたので、それによって相殺されていたと話してました。


その後、重圧なラジカセデザインを作っていたオーディオ事業部に配属されてめまいがしたそうです。男性に絞り過ぎたデザインから、シンプルなデザインを採用した「P-case」をデザインした。これは、バキュームフォーミングによって開発することを思いついたのだそうで、当時のデザインに求められられていたのは「ガッツ感」で、そうゆうデザインを求められている部署の中で異質だったそうです。


P-CASE

P-CASE

当然、P-caseは売れるはずもなく、デザイナー自らが、無印良品などに直接セールスしに行ったのだそうです。世の中の人は「売れるデザイン=良いデザイン」と言う人がいるが、じゃあ、世の中で一番売れている食べ物はマクドナルドなのだから、それが一番良い食べ物だと言う人がいるのか?と聞かれれば、誰もが疑問を感じるはず、つまり、売れるデザイン=良いデザインは間違っていると説明し、実際にP-caseが売れ始めたら、会社側は、その人気にあやかり、次にこれでテレビを作ろうといった話しが出始めたそうです。

売れるデザインを考える必要性は、その会社に付随する社員全員の生活を支えることを意味していて、逆に言えば、それらは、利用者のためのデザインではなく、中の人のためのデザインでしかなくなると考え出し、社員を捨てて自分のデザインを追求するか否かを考えた時、誰かを犠牲にすることが出来なかったので、だんだん居場所がなくなり「デザイナーを辞めよう」と思ったそうです。


efish

efish

そして、efishを始めた頃に、小物を作って個展をはじめ、多くの人が吸える灰皿や、きょろきょろと名づけたスーピーカーなどをアートとして作ったりしてた。これらはデザインではなく、アート作品で、プロダクトデザインとアートデザインとは違うと説明してました。

次第に空間デザインを依頼されることが多くなり、そこでは、家具も全てオリジナルでデザインしたそうです。そうした頃にAppleからオファーがあり、自分が一番デザインしたいものは「人生」なのだから、ここでAppleにいかないとダメになってしまうと考え、渡米することに決めたそうです。

そして、Appleで7年間が経過し、9時〜6時30分の間ずっとデザインの時間に当てられているのは幸せだと話してました。デザイナーが、途中で戦略会議に出る事も無ければ、リサーチ会議に出る事もなく、やってることは「売れるデザインを考えているのではない。良いデザインを考えている」それだけでしかないと話してました。


初代のiPhoneは、下の方が電波を通すためにプラスチックなのだが、これをアルミ風にペイントしなかったのは、もし塗装が剥がれてプラスチックが見えてしまえば、なんだアルミじゃないのかと思ってしまうと思う。ようは、その素材はプラスチックでアルミではないのだから、そのままの素材を出すことにしたと話し、Appleの製品は「アルミはアルミでアルミ風ではない」それは製品の本質として重要なのだと語っていました。


西村氏が、西堀氏にインタビューする形式で進められました。

カフェで、気持ちよく思ってもらえる接客ってあると思うが、デザインにもそういうところがあると思うと述べ、コンセプトとかクールであるとかは重要ではなく、自分は使う側の喜びに興味があると話し、コーヒーを一杯入れるのは誰でも出来るが、あ〜また来たいと思ってくれることは、それらに付随する全てがよくなければならない。それとデザインは似ていると話し、素人だろうがプロだろうが、いかに愛される店にするかが重要ではないかと考えていると話してました。

デザイナーを辞めて、ゴミ処理場に行こうと思ったのは、モデルチェンジがどんどんされる時代の中で、売上至上主義の中で、処分されるべき世界を実際にこの目で見る必要があると思ったからだそうです。自分達が作り出したのものが、ゴミとして廃棄される。そこへの執着心はかなりあるようで「ゴミを減らすには、捨てさせないようにする事」という究極のテーマに挑んでいるように感じました。

西堀氏は、当時乗っていたアルファロメオを100万円で売って、2万円のボンゴを買った。それによって得た98万円で様々な作品を作ることができたと回想し、世の中は思ったようにいかない。その度に迷うと思うが、私は迷わず、今の自分で出来る事を考えるようにしている。と話し、出来る事から始める主義を提案していました。

西堀氏は、精神的にネガティブに感じていると、受けとるものも受けとれなくなってしまう。なので、なるべくポジティブに感じるようにしていると述べ、ようは「後悔しないために人生を生きている」たったそれだけの事だと話していました。

Appleに入って一番感動した事として、嫁が入院したときに、2日間だけ休みを取りたいと上司のJonathan Iveに話したら、「仕事のために働いているんじゃない。家族のためにみんな働いている。だから1週間休め」と言われた事に感動したと話してました。

チームは、そのためにいるのであって、仕事で生きるために働いているんじゃないんだということが強烈に感じたそうで、有給を気軽に取るなんてことは日本では出来ないと思え、そうした生活における主軸をどこに置くのか?といった考え方が根本的に違うと思うと話してました。

デザインに関して、日本の企業と違うのは、スケッチデザインで物を決めないという点が大きく違うと話してました。スケッチを元に3D化しても、わからない事が多く、実物大のモデルを何度も作って判断するようにしているのがAppleだと話してました。1つの製品に対して、作る実物大モデルは100個以上にもなり、2mmの違いでもモデルを作ろうという風潮がAppleにあると話してました。もし、日本ならば、実物大モデルを1個作るのに100万かかるとしたら、5個までしか予算はないと言われるかもしれないが、Appleには制限などないそうです。

デザインミーティングが週に2回あり、デザイナーが13人しかいないので、全員で色々デザインを行っているそうです。西堀氏がAppleに入った時は10人目で、チームの全員が、この人とと働きたいと言わないと雇われることはないのだそうです。西堀氏は、まったく英語が話せない状態でAppleの面接を受け、ずっと笑っていたから雇われたんだと思うと笑いながら話してました。

雇用の面で日本と違うのは、履歴書の書き方が違うと思うし、人事部が選ぶのではなく、一緒に働くであろう部署の人が人を面接し雇う。そういったのは日本ではないかもしれないと話してました。

また、iPhoneが凄いのは、筐体のデザインが凄いのではなく、中身のソフトが凄いのだということだと述べ、ソフトウェアエンジニア達も、世界最高の物を作ると思って働いてるので、我々もその思いに負けないように本物を作り続けていると話してました。

会場からの質問で、デザイナーになりたかったが、生活の安定を優先して、その道を諦めてしまったという質問に対して、西堀氏は、自分もデザインを辞めようと思った時、怖さはあった。やりたいと思ったことは、生活を犠牲にしないまでも、やった方が良いと思う。仕事になるかならないかは別にして、やりつずけることが重要だと思う。途中で辞めたら、それは本当に自分がやりたいことではなかったのだろうとアドバイスしてました。

西堀氏は、40歳になってからサーフィンを始めたそうで、はじめるかはじめないか?それが一番重要だと思うと話してました。

「良いか悪いかは別にして、権力者が売れるために物を作ったら世界は終わる。世の中に起こすムーブメントは、自分で信じていることが重要で、良い悪いは判断出来ない。先にムーブメントをコントロールされてしまうと危険ではないかと思う。良いデザインは、相手が喜んでもらえる事で、それ以上に欲が出てくるとズレが生じてくると思う。扉を開けて、後ろに人がいると、開けてあげようと考えることが出来るかどうかで人は変わってくる。」

と話してました。



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