2011年12月01日(木)

止めることの難しさ

伝記「スティーブ・ジョブズ」や「スティーブ・ジョブズは何を遺したのか」の中に、多く登場する「止める」という話しだけど、これは深く考えると、ハードウェアを作る企業にとっては、とてもリスクが伴う決断だという話しを、初代iPhoneが出る前に話しを聞いたことがある。

ある製品を発売することが決まるとする。そうすると、部材調達やOEM工場への生産ライン立ち上げが始まる。Appleが始めるのだから、その規模は尋常ではないレベルになる。

ここでプロジェクトリーダーが決まり、それが正しく回るように莫大な予算計画が提出され、決済を受けて資金投入が行われる。

プロジェクトリーダーが考えることは「円滑にラインが動く事」だけ。

ところが、途中で「これは社の製品としてダメな製品ではないか?」という事に誰かが気づくとする。


日本の企業の場合は、それがダメだと分かったとしても、すでに生産のために莫大な資金を投入しているため、そのまま生産を続けて実際に発売開始してしまう。

ラインのプロジェクトリーダーも、予算請求を行っている手前、その責務を果たそうとして止めるという考えはなかなか浮かばない。

自分たちがダメかもしれないと分かっている製品は、たぐいまれな「運によるヒット」を期待するしかない。

結局、そうした製品は売れずに消えていく。

途中で止めても損をするが、発売しても投資を回収出来る可能性は低く、同じように損をすることになる。

ただ後者は「ダメな製品を売った」というダメージを受けるオマケがつく。

そして、誰かがその責任を問われることになり、下手をすれば、ただ生産ラインを立ち上げるために尽力したプロジェクトリーダーにも及ぶ。

さらに、部材受注を受けた企業や、OEMラインを用意していた工場にも損害が広がる。

Appleの場合は、そうした責任を問われたという話しや、受注をキャンセルされて損害を受けたという話しを聞かない。

なぜなら、企業のトップが社員によって出された意見を取り上げ、検討した結果「間違っていた」と決断して止めてしまうから。

率いるトップが考え方を変えることをいとわない。そうした風土がAppleにはあるそう。

損害は、保持している莫大な現金をもって保証すれば良く、まったく何も無かったかのように新しいプロジェクトが始まる。

この「何も無かったかのように翌日が始まる」というのは、とても驚いた事の1つだったそう。

それまでに費やした研究費や投入資金は無駄になってしまうが、その判断は間違っていなかったということを信じてる。

企業が何かを「止める」ということは、言葉の上では簡単でも、実際はとても難しいことだと読み解くヒントになればと思う。


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