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文化庁メディア芸術祭:アーティストが制作したiPhoneアプリを紹介する「ART Apps Collection」レポート

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ART Apps Collection

ART Apps Collection

文化庁メディア芸術祭において、iPhoneアプリで様々な表現をしているクリエーターによる「ART Apps Collection」プレゼンテーションが行われました。


JMAF navi

JMAF navi

まず、ソリューション関連のソリューションとして、文化庁メディア芸術祭のガイドアプリ「JMAF navi」について開発を担当したクウジット社による説明が行われました。


JMAF navi は文化庁メディア芸術祭の会場に設置されたWiFiアクセスポイントからの電波を利用し、「PlaceEngine」技術を利用することでユーザが何処に居るかを検知し、その場所にある展示物のガイドを自動的に表示するようになっています。また、展示エリア別に設定されたハッシュタグを自動付与して Twitter へ呟けるようにしたり、来場者に限定してクリエーターのコメントやサインをダウンロード出来るようにするなど、iPhone をリアルにリンクさせ、展示を深く楽しむ為の各種仕掛けが盛り込まれています。


株式会社ホットソース

株式会社ホットソース

続けて、紹介されたのが「MANGA SOURCE」を展開している株式会社ホットソース。電子出版が花開くと言われて早20年が経過するも、未だに文化が定着しないのは「紙出版物を単純に電子表示に置き換えようとしているだけであり、電子表示に最適化された表現を行って来なかった」事と考え、iPhone で電子出版に最適化され、電子出版だけで読めるコンテンツの開発を行い、また販売地域の拡大を図る為のコンテンツの日英翻訳を行って海外でのコンテンツ販売も行っています。


MANGA SOURCE

MANGA SOURCE

現時点では、江川達也氏による専用書き下ろしの作品が多いですが、他の漫画家の先生による書き下ろしの契約も進めており、何人かの先生からは「android などの iPhone 以外のプラットホームでも読めるようになるのであれば作品を提供する」という約束を取り付けているので、他プラットホームに対応する開発を行っているという事でした。


宮田人司氏

宮田人司氏

以上のようなソリューションに続いて、写真に時間と場所という要素を追加してアーカイブすることが出来るようにした「memory tree」を開発したXeNN社の宮田人司氏


鹿野護氏

鹿野護氏

デザイナーとして美しいと思いデザインしたパターンの中にユーザが撮影した写真を当てることで新しい作品を生み出すことが出来る「addLib」を開発したWOW社の鹿野護氏


Juli (天野あい)氏

Juli (天野あい)氏

自身の作品集「Samurai Girl」を iPhone アプリ「Pixel Love」とする事で動きという要素を追加した Juli (天野あい)氏


ネコモード

ネコモード

自社のDoll「Deco Niki」を iPhone 内で着せ替えやコンテストに出場させられる「ネコモード」や、コックリさんを iPhone でシュミレーション出来るようにする「iKokkuri-san」を開発中のペットワークス社 八谷和彦氏


Joiner コラージュ・カメラ

Joiner コラージュ・カメラ

入力されたキーワードを基に各種Webサービスから横断的に各種情報を検索して非常にアップテンポに表示する「FragMental Storm」や、1つの景色を数多くのピースで描き出す「Joiner コラージュ・カメラ」を開発したexonemoの 千房けん輔氏などの、アーティストによるアプリケーションの開発や意図についてのプレゼンテーションが行われました。


XeNN社の宮田人司氏は近日リリースするアプリケーションとして、「デジカメの登場で写真は『とにかく撮る、後からセレクトする』というスタイルになったが、以前のアナログカメラのように『一度フィルムを入れたらフィルムを使いきるまでは、そのフォルムを使い続けなければならない』という状況で考え抜いて 1枚の写真を撮影して、現像が終わるまで結果は分からない」という緊張感と一瞬一瞬を大切にするアプリを考えて、開発している」という機能を持たせた『mindSHOT』を考えているという構想が発表されました。


このように iPhone を取り巻く環境は多様化しており、数多くのクリエーターやユーザが流れ込んで来ており、その多くは「iPhone を使っていて、そこで表現することに興味を持ったから」ということを参入に理由にしていたことが非常に興味深かったです。

では、Google Androidなどの他モバイルデバイスへの展開も行うかという事については、「新しい表現が出来る挑戦として捉えている」という前向きな意見を持つ人が居る一方で、「開発リソースが不足しており、iPhone で精一杯なので無理」、「OpenGL などの iPhone が特徴とする機能を他OSは持っていないので、検討はしたが、現状では対応出来ない見通しとなっており現時点では断念」、「ビジネス系アプリでの成功は考えられるが、クリエイティブ系の分野で勝てる見込みが立てられない」などの意見を述べるクリエーターも多く、一言で携帯ガジェットと言っても、その立ち位置や期待されている役割は異なっていることが明らかになりました。


このように独自の立ち位置を確保している iPhone では有りますが、「初期の過剰な先行者利益というメリットは今日では皆無と言っても良いほど無い。アプリケーションの価格設定が安価過ぎるので独自性を出すか、きちんとプランニングしないと、iPhone だけで利益を出し続ける事は非常に難しい」という問題も出てきています。

この問題に対する1つの回答案として、「クリエーターは全てを作り出すのでは無く、カメラ機能やネット上の情報を利用してユーザが新たなる表現を行うことをサポートするアプリを生み出すこと」が、iPhone などの最新のデバイスを活用するクリエイティブワークの 1つという提言がなされ、プレゼンテーションは終了しました。


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