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Apple Store, Ginzaイベント「Meet the Author: 村上 龍」レポート(これからも必死に電子出版の未来を探して獣道を邁進して行く)

Meet the Author: 村上 龍

Meet the Author: 村上 龍

Apple Store, Ginzaにて開催された「Meet the Author」のゲストとして、iBookstoreオープン日に iBookstore限定配信となる書籍を3冊 電子出版した 村上龍さんと、モデレーターとしてまつもとあつし氏によるトークイベントが行われました。

村上龍氏は「先生」などと呼ばずに、「村上さん」と呼んで欲しいと言われていましたので表記についても準じたものとさせて頂きます。

村上さんの出版物は、発行者が「村上龍電子本製作所」になっていますが、これは村上さんが電子出版のために個人的に立ち上げた会社「G2010」のブランドという事でした。

会社創立時は G2010 という社名がカッコ良いと思って付けたものの、検索などで全然引っ掛からず、村上龍とのリンクも出来なかったので「村上龍電子本製作所」という名前を入れたベタなブランド名を付けたという事でした。社名変更も考えたものの、「予想していたよりも数百倍、面倒くさかった」という事で断念。現在の社名とブランド名という形で使い分けて行かれるという事でした。


歌うクジラ

歌うクジラ

さて、そんな村上龍さんが電子出版を始めようと思った切っ掛けは、「歌うクジラ」を書き上げる直前の 2010年01月27日に Steve Jobs CEO (当時) が iPad を発表するキーノートの中継を見たから。

この時に文字も綺麗に見れるというデモで Steve Jobs CEO (当時) に「(電子書籍を) 出してみろ」と言われているような気がしたので、書き上げる直前だった「歌うクジラ」を書籍で出すよりも先に電子出版する事を決意し、一気に動き出したという事でした。

もしiPad の発表が半年遅かったら、「歌うクジラ」は当初からの予定通りに紙での出版を終えていたハズで、そのタイミングで発表されても「あぁ、何か新製品が出たねぇ」で終わっていた可能性が高く、偶然とは言え運命的なほどのタイミングの良さという事でした。

そんなこんなで電子出版をする事が決定された「歌うクジラ」には「SE (サウンドエフェクト) では無く」、書籍を読むのを邪魔せず、逆に世界観に引き込まれみ易くするための音楽を付けたいと考え、友人の坂本龍一氏に依頼。

既存曲を使おうと思ったものの権利問題でNGだったので、新規に書き起こしてくれないかと頼んだら「良いよ」という3文字だけの返事しか返ってこなかった事にビックリ。しかも、1週間という「『歌うクジラ』をちゃんと読んでくれたのかな? と不安になるぐらい」と不安になるぐらいの早さで曲が上がってきたので、二度ビックリしたという秘話が明かされました。

こんなで電子出版の素材は揃ったものの、いざ書籍アプリにしようとすると「曲が聞こえるタイミング、消えて行くタイミングを考えるのが非常に難し」いという問題が。「昔は『マルチメディア』と言われていたリッチコンテンツ」ではあるものの、あくまでも基本は小説。小説を読み進める事を邪魔せずに、しかし世界観に引き込まれやすくするためのタイミングの調整には非常に苦労したという事でした。


心はあなたのもとに

心はあなたのもとに

iBookstore で販売するのは出版アプリでは無く、書籍のデータ。このためにアプリよりも利用可能なデータ容量などの制限が厳しく、電子出版のメリットを出すのが難しかったという事でした。

空港にて」「希望の国のエクソダス」の二冊では、表紙のイメージを動かす程度の演出にとどまりますが、携帯メールがストーリーのキーとなる「心はあなたのもとに」では文中にメールが出てくる場面では表示されているメールアイコンをタップすることで携帯電話の画面を模したイメージの中にメール文章が表示されるようになっているそうです。


心はあなたのもとに

心はあなたのもとに

この演出によって、縦書きの小説の中においても横書きのメール画面を表現する事が可能になる上に、メールの場面に来るたびに当該メールを開いて行くような間隔が得られます。このために小説の中であっても、まるで日ごろから慣れ親しんでいる携帯メールを見ているかのような表現ができるようになると説明していました。


そんな新しい表現方法などを切り開いた電子出版ですが、そのメリットの1つとして村上龍さんが挙げられたのは 読者の感想などのフィードバックが 商品のレビューとして掲載されること。

その内容は千差万別ですので、中には中傷としか言えないものや、次作の小説を必死に書いている最中に「こんな (小説以外の) 作品書くよりも小説を書けよ」と書かれたレビューを見てしまい真剣に落ち込むこともあるものの、「下手な書評よりも遥かに的確なレビューも多い」という事で村上龍さんは「ブログも含めて、結構読んで勉強しています」という事でした。

ただし、読者との接点として持つのは レビュー のような感想に限られており、小説の世界観までも読者投票のような形で左右させる事については「自分 (村上龍さん) の中では (手法としては) 無い。」という事でした。


電子出版の今後については「2010年から今まで変わらず、電子出版にはフロンティアが存在すると思っている」ものの、フロンティアというのは西部劇に出てくるような広大な草原では決して無く、険しい獣道を必死に辿ることで何とか見つけられる可能性が有る程度のもの。

時々は視界が開ける場所に出るかも知れないものの、「恐らく、その先に峠や山が待ち構えている事も一緒に見えるはず。そして、そこに繋がっているのは、それまでと変わらない、正しいかも分からない細く、険しい獣道」であり、これからも必死に電子出版の未来を探して獣道を邁進して行かれるという事でした。


イベント後には iPad による iBooks ハンズオンも行われました。



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