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変わるもの、変わらないもの ― グローバル企業としてのアップル ―

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同志社大学 神学部・神学研究科 公開講演会として、
アップルジャパン社代表取締役社長兼Appleセールス担当バイスプレジデント
山元賢治氏による講演が行われた。

Innovation

最初に、「Innovation」について話した。アップルは、この2年間で約80名の新入社員を採用しと話し、今はよく知られているiTunes以外にも、こんなものがあったら良いなとか、人の真似をしないで、わくわく出来るような物が提供出来たら良いなとか、自分たちが考えるさまざまな分野でイノベーションしてきたと説明した。

25年前にディズニーランドが出来た。1,000万人/年、年間9,100億円の産業となり、それに関連する宿泊施設など関連事業が潤う新しいビジネスを作り出した。京都に本社がある任天堂は、ファミコンを発売し6,291万台売った。マイケル・ジャクソンは、アルバム「Thriller」を1億4000万枚も売った。世界最長の海底トンネル「青函トンネル」(54km)が出来たのも25年前で、このトンネルが出来た事で、函館、札幌の宿泊者数が伸びた。これは全て25年前に起こった事だと説明した。


山元氏は、当時IBMに勤めていて、メインフレームを相手に、テープを読むような仕事をおくっていた。そしてAppleは、25年前にコンピューターを家庭でも使えるようにしたいとの思いから、革新的なパーソナルコンピュータを発売した。その後、マウスによる操作も、実用レベルで実現した。その後、革新は続き、素っ気ないパソコンを、カラフルでポップなデザインを採用した「iMac」を登場させた。それが、今は極薄のiMacになったと説明した。


現在、アップルは、首都圏でシェア1位を獲得した。また、Intel Macによるメリットとして、Windowsも動くようになった。そして、日本が何10年間もリクエストし、それに応えたくれて出てきた製品。それが「MacBook Air」だと説明した。これは、様々な点で妥協しないAppleのポリシーに、製造出来る技術が追いついてきた事で実現出来たと説明した。

山元氏は、MacBook Air/SSDモデルを持ち歩いていると実機を持ち出して話し、フタを閉めてから、再び開けるまでにスリープからの復帰がもの凄く速くなったと紹介した。また、Appleは「A Greener Apple」と呼ぶ環境問題への取組についても積極的で、毎回、新製品を発表するたびに、パッケージをいかに小さくするかについても本気で考えていると話した。小さくする事で、飛行機で運ぶ回数が減り、それはCO2などの削減に繋がる。また、紙の消費料を減らす事にも努力していると述べた。また、現在、アップルジャパンの会社も、電気消費量を減らすため、19時になったら帰るように社員に言ってると説明した。


次に、Appleは、2001年10月23日にiPodを発表した。それは9.11のテロの2ヶ月後だった。これは、沈んだ気持ちの中で、あえて、楽しい革新的な製品を出してゆこうという思いで、その年に発表したと説明した。今では当たり前になっているMP3プレイヤは、当時、日本とフランスの一部でしか広まっていなかった。違法なMP3データが広がりを見せ始めていた中、自分たちが正規で購入したCDを全て持ち歩きたい。そう、Apple社員が思って作ったのがiPodだと説明した。


iPodが普及してゆくと、次第に、iPodはパソコンが無いと使えないという声が大きくなり始めた。そこでAppleは、iPod touchを発表し、その中のiTunes Storeからパソコンが無くても曲が買えるようにしたと説明した。また、iPhone/iPod touchへアプリケーションを追加して、もっと楽しみたいというデベロッパーの声に対して、iPod SDKを公開した。他社は、こうした製品戦略を自社だけで行おうとしているが、Appleは他社に公開し、パートナー戦略を重要だと考えていると説明した。


Global

Appleは、自分が欲する物を自分たちが作ってしまう。そして、グローバルを意識していると話した。日本の携帯電話は、携帯電話会社による様々な制約によって、グローバル化されていない製品が多くみられる。そのため、市場が日本に限られた中で生産を競っている。世界の携帯電話シェアの中で、日本メーカーは少なく、撤退する生産メーカーまで出てきている。それが現実だと説明した。Appleのパソコンシェアは世界で10%〜6%しかないが、生産数から見ると、1位は東芝で、2位はAppleとなっていて、ライバルと考える企業は、1位の会社しか無いといった視点で見られるかどうかが、企業戦略において別れ目になっていると説明した。また、ハードだけで全てを実現しようとすると無理が出てきてしまい、ソフトウェアも自社で開発するというのは大変重要だと説明した。


また、製品の生産について話し、様々な部材を世界から調達して生産を行っていて、例えば、iPodのイヤフォンは、金型による耳が出ない生産を行える台湾のODM会社で、3,000個以上ものテストを繰り返し、その中でベストなものを選んで製品化したりしていると話した。また、Appleの製品は、中国で作られていて、その工場では一時期10万人もの人が働いてたと話した。こうして製造された製品は、シンガポールでパッキングして出荷を行っている。こうした、グローバリゼーションは、iTunes Storeで世界中の音楽を販売出来る理由にもなっていて、その品揃えによって、アメリカでもっとも楽曲を販売する小売店にまで成長したと説明した。これから企業しようと考えた時、世界で通用するかどうかを念頭において考えた方が良いと話した。


Information

インターネットは、従来まで情報を得ていた「新聞」「テレビ」「ラジオ」だけでなく、情報を得るための幅を広げたが、そうしたインターネットコンテンツから、情報を得る事が当然のようにと強いられるようになった。見てませんでは済まされなくなってきている社会が形作られていると話し、25年前は、営業だからメールなんて見てませんよで済まされていたが、今はそれが通用しない。便利になった反面、嫌な事であっても強いられるようになってきていると話した。


今は、とてつもない情報量を処理し、そして伝えなければならない時代になってきている。アメリカの企業関係者は、もの凄い文章量をとてつもないスピードで打つ事が当たり前だと感じている。それは、テクノロジーに対して、どうやって接すれば良いのか?について、教育の中で学んできているからだと説明した。山元氏は、社員に対して「Priority」を意識するよう言い続けていると話した。


Appleは、ポッドキャストを利用して、24時間、勉強したい時に勉強をする「One to One」プログラムを推進していると話した。アメリカでは、このポッドキャストを聞いて、大学や学んでみたい教授を選んだ生徒が15%もいたというリサーチ結果が出ている。学校を選ぶ方法が変わってきている現実がそこにあり、それを、日本でも普及してゆこうと努力していると説明した。また、学校内におけるMacintoshの販売方法に関して、生協での販売に加え、学内の丸善で販売を開始したと説明した。また、毎週、小学校から大学まで回って講演を行っていると話した。


変わるもの、変わらないもの

20年前はどうだっか?1988年に出た携帯電話は3kgだった。アナログのレコードからCDへと移り変わろうとしていた時で、CDのシェアは13%しか無かった。IBMに勤めていた頃、1億円以上の専用回線代を支払ってネットに繋がっていた。そこで、メールに写真を貼って送ろうとしたら、ネットワークが遮断して、非常に怒られたエピソードがある。今では信じられない話しだが、今、現在、自分達が信じられないようなことが未来には起こりうるということを覚えておいて欲しい。今の20年後を想像することは難しい。それと同様に、20年後のビジネスを読み取る事は難しいか、ヒントを感じることは出来ると思う。そうやって、絶えず意識するということが、ビジネスにおいて重要なことだと知っていて欲しいと話した。


情報が増えたという事は、要求が増えるという事で、日本人は、データベースを蓄積することを苦手としている。成功事例(Knowledge Base)を話す事を苦手としているが、アメリカでは、成功した姿を見せてシェアすることが当たり前で、そして、自分はさらに高いところを目指している人が多いと話した。Appleは、英語で会議する事が多い企業なのに、英語を学ばないで就職する人が少なく無い。Appleは優しい企業だから、英語を学ぶカリキュラムを提供しているが、元々話せる人は、別の勉強をして成長している。そこだけでも差が出てしまう。また、専門知識も必要で、専門講座を受講するよりも、その専門分野に長けた先輩から、もの凄いスピードで吸収した方が良いと説明した。また、体力も重要だと話し、人間は、体力が無いと、完成度のハードルを下げてしまう。完成度を決めるのは発注者側だけなのに、それを自分が決めてしまう。それは、高い品質を要求するAppleではマイナスな部分となると話した。


今、Appleが成長してる国はロシアで、誰もそんなことは考えてなかったと話した。これは、グローバルであったからこそ出来た事で、日本市場だけを見ているといった製品を作っていたのでは実現出来なかったビジネスチャンスの例だと説明した。全ての利益を自分達だけで分配するようではダメで、研究開発や慈善事業など、企業は社会に貢献しないといけないと話した。


また、メールによるコミュニケーションが発達して、メールだけで事を済まそうとする人が多く出てきているが、そうした人はビジネスでは成功出来ないと説明した。「Face to face」は必要。悪い話ほど対面でコミュニケーション出来なくてはならない。あるプロジェクトが始まって、それが期限中に不可能だとわかった時、それに対するメールが、真夜中だったりする。それは、ここまで自分はがんばったんだという意思の現れだと思うが、もっと前からわかっていた筈なのだから、面と向かって説明していれば、相手企業に対して余裕で謝罪なり、納期延期について説明出来たはずなのだと説明した。


今の日本の教育において、シニア世代におけるコンピューターリテラシーが遅れているような気がする。新しいテクノロジーによる提出物を行おうとしようとすると、先生から反対されてしまう事が多い。そうしたテクノロジーに疎い大人を「デジタルエイリアン」と呼ばれている。子供の方がテクノロジーに対する成長が早いのに、コンピューターとは?と話す先生がいたりする事からも、日本の現状がどうなっているか?理解出来ると思うと話した。


Q & A

Q:Appleの問題点
A:東名阪におけるAppleのシェアは非常に高いが、それ以外の地域では、会社の名前も知らないほどシェアが低い。それは、Appleの企業努力が低いからだと考えていて、新入社員に各県を担当させ、ユーザーグループの活性化を含め、積極的に地方開拓を行っている真っ最中

Q;Appleのシェア
A:企業でWindowsしかないといった話しを聞くが、それはどうぞと勧める。それよりも、しっかりとドメインを定める事が重要で、お肉屋でよく売れそうな色にすることは簡単だが、医療の世界では、正確に色を出せる事を要求される。それを技術的にどうするか?といった事に膨大な開発費を投入したりする。いかに安くだけを考えているだけでは、将来は無いと考えている。

Q:iPhoneの日本販売について
A:Appleは将来の製品について話さないが、私の顔を見てもらえばわかると思うが、悪い進行状況ではないと思う。今日は、会場に、非常に情報が正確なMACお宝鑑定団のDANBO会長が来ているので、そちらで聞いてみた方が良いのでは?

Q:iPhone/iPod touchの技術について
A:Appleは世界で最初にPDAとしてNewtonを発表した。なので、そうした製品開発は初めてではない。世の中には革新的な製品として発表され、消えていった製品は何万とある。いつ世の中に出すか?そのタイミングも重要な要素だと考えている。

Q:Innovationに限界はないのか?
A:10人の意見を聞いて、さらに1人の意見を聞けば変わる。また、世代によって、物の捉え方は違う。なので、限界はないのでは?

Q:Appleの企業特色について
A:バイスプレジデントが集まる会合で、みんなが自分の夢を語っている。それは、奇跡に近い。

Q:技術革新について
A:IEEEなど世界標準規格に乗って、その最先端で何が出来るかを考えている。バックアップが重要だとわかっているのに、それを行っている人は非常に少ない。なので、Time Machineという技術で、それらを自動化するといった試みを行った。

Q:Steve Jobs氏が退任した後について
A:きっと考えているとは思うが、最新のインタビューの中で、今のエグゼクティブの誰がなっても問題ないと発言しているから、問題はないと考えている。

Q:山元氏の夢
A:アップルジャパンを日本で一番誇れる企業にしたいと思っている。


個人的に質問
Q:Apple Premium Resellerの募集について、また、その中の条件にあるアップルヘルプデスク認定者について
A:日本の販売店におけるシェアを全国レベルでアップしたいと考えている。その取組の一つ。 アップル認定トレーニングについては、アメリカに7ヶ国語を話せる専門の部門が新しく新設され、日本の担当者も決まった。講師陣も新しくし、近い将来にプログラムが動き出す予定。

Q:ユーザーグループについて
A:各学校内で、学生の方々が、自主的にMacについて勉強してくれるようなプログラムを試験的に始めている。それが、新しい世代のユーザグループとして成長してくれるよう期待している。


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